必要な肥料とその働き
野菜が育つには、土と水だけでなく、養分が必要、必要な養分が不足すると生育が悪くなります。
肥料は野菜が健やかに生育するために与えるものですから、野菜が必要とする肥料成分の種類や働きなどを理解し、目的に応じて使い分けることが大切です。
機能の異なる3つの肥料
肥料にはさまざまな種類がありますが、野菜を作るための肥料には、大きく3つの栄養素が必要。
- 土をやわらかくする役割
牛糞や腐葉土など堆肥(たいひ)といわれるもので、有機物を微生物によって完全に分解した肥料のこと。堆肥が土中に適量に含まれていると、さまざまな微生物の活動が活発になり、野菜の根の生育や肥料の吸収を助けます。 - 野菜に栄養を補給する役割
一般に野菜を作るための肥料と呼ばれているもの。野菜の生育に必要な栄養素のうち、特に不可欠な「三大要素」と呼ばれるチッ素(N)、リン酸(P)、カリ(K)。これらを適切なタイミングで適量を与えることで、野菜は順調に生育し、十分な収穫を得ることができます。 - 酸性度を調整するための役割
消石灰、苦土石灰、カキ殻石灰など一般的に石灰と呼ばれるものです。日本では酸性土壌であることが多い反面、多くの野菜は弱酸性の土壌を好みますので、土づくりのときにアルカリ性の石灰をまくことで、土壌の酸性度を調整することが大切になります。
有機肥料と化学(無機)肥料の使い方
肥料は、その原料で分けると、動植物を原料としたものを有機質肥料と、化学合成で作られた化学肥料(無機質肥料)の2つに分けることができます。また両者を混合したものを配合肥料と呼びます。
有機質、無機質、両者の成分は大きく異なりますが、植物に無機化合物として吸収される点では共通しています。
最近では「有機肥料・有機栽培」にこだわる人も多いようですが、野菜づくりは肥料だけで行うものではないため、有機質肥料にも化学(無機)肥料にもそれぞれ利点と欠点がありることを理解したうえで両方を組み合わせて使用することで、安定した生育・収穫を得ることができるといえます。
肥料成分の見方・特性
市販されている肥料には、袋にからならず8・8・8とか8・10・6などの数値が記載されています。これらはその肥料に含まれる「三大要素」と呼ばれる、チッ素(N)、リン酸(K)、カリ(P)の重量比を示しています。
8・8・8ならなら100gの肥料の中に、それぞれの成分が8gずつ入っているという表示。
- チッ素(N)
葉肥。葉や茎の生長に必要不可欠。な栄養素。葉を収穫する野菜には特に必要ですが、実を収穫する野菜には与えすぎないのがポイント - リン酸(K)
実肥。花や実、根っこの生長に必要不可欠。実を収穫する野菜に特に必要とされる栄養素。与え過ぎによる害もありません。追肥ではなく、必ず元肥で与えるのがポイント - カリ(P)
根肥。カリウムのこと。ジャガイモやサツマイモなど根を収穫する根菜類に効果のある栄養素。不足すると、葉が黄色くなったり、開花が遅れたりするので注意。
市販では、さまざまな比率のものが販売されています。使用する作物、目的にあう比率のものを選ぶのことが大切。家庭菜園では各成分が極端なものではなく、8~5の有機配合肥料を選ぶといいでしょう。
区別 | 種類 | 成分(%)※参考値 | 特性・使い方 | |||
窒素 | リン酸 | カリ | ||||
有機質肥料 | 植物性 | 油粕類 | 5.3 | 2.3 | 1.0 | やや遅効性でカリ(K)分が少ないため、化学肥料と併用すると効きやすい。 |
草木灰 | - | 4.0 | 1.0 | |||
動物性 | 魚粕類 | 6.7 | 4.2 | 0.5 | 効果がゆっくりと持続するのが特徴、化学肥料と併用すると良い。 | |
骨粉 | 2.7 | 22.0 | 0 | リン酸(P)主体の肥料で元肥に用いる。 | ||
鶏糞 | 5.0 | 4.0 | 2.0 | 比較的速効性で多肥すると肥やけしやすいので注意。 | ||
牛糞 | 0.3 | 0.2 | 0.1 | 成分量は少なく、未熟なものには注意が必要。 | ||
配合 | 有機配合(例) | 6.0 | 6.0 | 6.0 | 油粕を主体に三大要素バランスが良く、元肥、追肥両方に使える。 | |
化成肥料 | 単肥 | 硫安 | 21 | - | - | 速効性のチッ素(K)肥料。水に溶かして追肥にも使用できる。 |
尿素 | 46 | - | - | チッ素(K)成分が多く、水に溶かして葉面散布にも。 | ||
石灰窒素 | 21 | - | - | 遅効性で元肥に使用。土壌の消毒効果もある。 | ||
過リン酸石灰 | - | 17 | - | 肥効の早いリン酸(P)肥料。元肥にも利用できる。 | ||
溶リン | - | 20 | - | 遅効性で肥効が長く、元肥に利用。 | ||
硫酸カリ | - | - | 48 | 速効性肥料。使用過多で苦土欠乏がおこる。 | ||
塩化カリ | - | - | 60 | 硫酸カリと同様、茎葉につくと肥やけをするので注意。 | ||
複合化成肥料 | 普通化成(例) | 8 | 8 | 8 | 速効性で三大要素がバランス良いのが特徴。 | |
高度化成(例) | 15 | 15 | 12 | 三大要素の含有量が多いのが特徴。どか肥には注意。 | ||
緩効性肥料(例) | 12 | 8 | 10 | 各成分量が多いが、ゆっくりと長く効果が続くのが特徴。 | ||
液肥 | 液肥(例) | 15 | 5 | 8 | 速効性で、300~500倍に薄めて追肥に使用。 | |
葉面散布剤 | ヨーゲン | 30 | 10 | 10 | 肥切れ、生育不良のとき、0.5~2.0%液を葉面に散布して一時的に早く効かせたり、農薬に混ぜることもできる。 | |
スミリーフなど | 21 | 21 | 14 |
元肥(もとごえ)と追肥(ついひ、おいごえ)
「元肥(もとごえ)」とは種をまいたり、苗を植えたりする前に土に施しておく肥料のことを指し、植えた野菜の生長に応じて施す肥料を「追肥(ついひ、おいごえ)」と呼ぶ。
- 元肥(もとごえ)は遅効性で長期間肥効が続くものを使用。
- 追肥(ついひ、おいごえ)は即効性のある肥料を使用することが多い。
コマツナやコカブなどの種まきから収穫までの期間が短いものは、元肥を十分に施しておくことで、追肥の必要がなく、トマトやナスのように生育に時間がかかったり、収穫期間が長く続くものは、途中で肥料が不足するので追肥が必要になる野菜もある。